
発達障害のある学生はどのような進路で就職していくのでしょうか。もちろん、進路は多様ですが、その全体的な傾向をお伝えします。一般雇用か障害者雇用か、どんな機関で支援を受けられるか、など当事者も支援者も知っておきたい情報です。
発達障害特性を受容している学生は、発達障害特性を明らかにせずに企業に応募する(クローズ)、発達障害特性を明らかにして企業に応募することを(オープン)を選択する必要があります。オープンにして一般雇用をされるケースは少ないため、多くの学生は最初にクローズでの一般雇用就職を目指します。クローズでの就職活動によって、内定が出る学生もいますが、面接で落ち続けるなど苦労をする学生は少なくありません。一方で、クローズでの就職活動によって入社した場合、離職率が高いというデータもありますので注意も必要です。また、就職活動を通して、今まで気づいていなかった自分の発達障害特性を気づくケースもあります。また、発達障害特性に気づいていても、受け入れることができていなかった学生が、就職活動での苦労を通して自分の発達障害特性に向き合うケースもあります。
就職活動に失敗し続けた場合、様々な支援機関を頼る、公務員を目指す、障害者雇用を目指すなど、次の道を模索していくことが多いようです。精神的に落ち込んだまま立ち直れず、留年したり、進路未決定のまま卒業する学生も見られます。
障害者手帳がある場合、障害者雇用での就労を行うことができます。障害者雇用とは、企業が障害者を一定割合雇用する義務を負う制度のことです。発達障害だけではなく、その他の障害の方の雇用も含まれます。障害者雇用での就労のメリットとして、そもそも障害者を対象にしているので、採用されやすいことが挙げられます。また、就業後も障害特性に応じた配慮を受けやすいので、仕事面での困りごとが少ないというメリットもあります。一方でデメリットとして、単純作業などの仕事に限定され、給料も低いことが多いです。また、仕事内容や給料が固定され、キャリアアップを行うことが難しい場合が多いというデメリットもあります。
障害者雇用での就労を目指す場合、まずは障害者手帳の取得が必要になります。障害者手帳を取得するためには、自分の発達障害を受容して、精神科で医師の診断を受けることが必要になります。そこで発達障害と診断された場合、初診から6ヶ月後以上経過した後に、障害者手帳を申請することができます。
障害者手帳を持っていたとしても、他者に伝える必要はなく、利用する場面も限定的ですので、障害者手帳を持っていることを伝えない限りは周囲から障害者だと確認することはできません。
障害者雇用を目指す場合、選考時・入社後に適切な配慮を受けることができます。その結果、内定の取りやすさ、入社後の定着につながります。
では、障害者雇用を目指す学生は簡単に就職できるのでしょうか。そうとも限りません。大きな課題となるのは、①本人・保護者の抵抗感②就職活動の流れが見えにくい、ということです。
①本人・保護者の抵抗感については、障害者雇用のデメリットや、障害者に対する社会からの偏見を考慮して、障害者雇用に対して本人や保護者が抵抗感を感じることがあります。
②就職活動の流れが見えにくい、ということについて障害者雇用を利用した就職活動の情報自体があまりありません。また、新卒採用のように固定化し、決まった流れがあるわけでもありません。そのため、障害者雇用での就職を目指す学生が混乱をする場合もあります。そんな時は、専門性のある支援者から支援を受けることが大切です。
発達障害のある学生は、在学中にも就労を支援する様々な機関の支援を受けることができます。例えば、ハローワークでは、一般雇用・障害者雇用の両方の相談をすることができます。その他、障害者就業・生活支援センター,発達障害者支援センター,障害者職業センターなどといった機関があります。
卒業までに就職ができなかった場合、就労移行支援事業所に入所するケースも多くあります。就労移行支援事業所とは、障害福祉サービスの一種で、障害のある方に対して職業訓練・就職支援・就職後の定着支援を行う施設です。上限は2年間と決められており、その間に様々な訓練を受けます。また、就労移行支援事業所は、独自のネットワークを持っているところが多く、公開されない求人を紹介してもらえることもあります。どのような障害特性・年齢の方が多いか、どのような訓練を受けられるかなど、事業所ごとの特色があります。当事者・支援者とも、利用を検討する際は実際に相談に行くと良いでしょう。
このように、発達障害のある学生の進路は様々です。大学の支援者は、どんな進路が取り得るかを理解した上で、支援機関と日頃から情報交換をしておくなど、いつでも連携できるようにしておくことが重要です。