【支援コラム】大学生活での困りごとを持つ学生への合理的配慮に大学側はどう対応すべきか?
発達障害のある学生は、学習以外の面でも多様な困りごとを抱えます。それらの困りごとにそもそも大学は対応する必要があるのでしょうか。また、対応するとすれば、どんな対応が求められるのでしょうか。困りごとの種類ごとに対応方法を見ていきます。
発達障害のある学生が抱える日常生活の困りごとは、特に「生活習慣」「人間関係」「スケジュール管理」関連が多いようです。本人からの支援の申し出がある場合、「合理的配慮」の範囲内での対応が求められます。
なお、発達障害のある学生に対して、学習面以外の支援をする必要があるか否かについては、議論の分かれるところです。確かに、高等教育機関としての大学の役割から考えると、学習面以外の支援は必要がないように見えるかもしれません。しかし、発達障害のある学生にとって、「生活習慣」「人間関係」「スケジュール管理」などにおける困りごとは、学習面に対して直接的な影響があるものも多いです。そのような場合には、発達障害のある学生に対して、過度にならない範囲での支援が必要であると言えるでしょう。
発達障害のある学生の中には、生活習慣が乱れるという困りごとを抱える学生が多く見られます。
例えば、ASD(自閉症スペクトラム障害)のある学生は、知覚過敏のため日常での刺激を強く受けすぎ、夜眠ることができないため寝坊してしまう。ADHD(注意欠陥多動性障害)のある学生は衝動性の高さゆえゲームを止められず夜眠るのが遅くなり、結果的に時間通りに目覚められない。このような結果、授業に遅刻・欠席することが増え、単位を落としてしまうといった場合が見られます。このような場合、支援者の指導のもと、
①現状のモニタリング…生活スケジュールや、入眠時間を記録して、現状の睡眠状況を把握するなど。
②対応の検討…生活習慣を見直し、対応策を検討する。という2つのプロセスを経て、生活リズムを整えるなど。
また、大学生になり、比較的使える金銭が多くなるものの、うまく管理できず使いすぎる、といった問題が生じることもあります。こちらも同様に、①現状のモニタリング②対応の検討、というプロセスで改善を図ることも一つの手です。
また、発達障害のある学生は学内・学外問わず、人間関係で困ることが多いです。例えば、ADHDのある学生が不用意な発言から、人間関係を悪化させてしまう。ASDのある学生が、「社会性」「コミュニケーション」「他者への想像力」の欠如のため、講義中やサークルでトラブルになるといったケースが見られます。結果的に友達ができない、サークルでうまくいかない、アルバイトが続かない、といった問題を抱えることになります。また、大学の中で孤立することは、引きこもり・退学に繋がることもあります。対応策としては、社会的スキルの指導(ソーシャルスキルトレーニングなど)、同級生への啓発、ピアサポーター(障害者支援を行う学生)による支援などが挙げられます。
高校までと違って、大学では学生の自由度が高まります。受講する講義を自分で選択することができます。部活・サークルの選択肢も増加します。アルバイト・ボランティア・資格取得といった課外活動に参加することもできます。しかし、自由度の反面、自分で管理をしないといけない要素も増えます。日常生活では、多様な予定を全て自分で管理し、時間通りに約束の場所に向かわなければなりません。テスト期間には、複数あるレポート、テストについて、スケジュールを組んで取り組んでいく必要があります。
しかし、発達障害のある学生の中には、締め切りを忘れる・見通しが甘い・優先順位をつけられないなどの理由で、スケジュール管理が苦手な方もいます。例えば、授業やアルバイトに遅刻する、レポートを出し忘れる、テスト勉強が間に合わないなどです。対応策として、支援者が定期的にスケジュールを確認する、支援者と共にテスト勉強・レポートなどを細くタスク分けして、取り組み方法を考えるなどといった方法があります。